もう不妊治療で悩まない為のマニュアル
日々認知度が高くなるAID、男性不妊患者が知っておきたい基礎知識
不妊治療の中で最も扱いが難しいため慎重で誠実な対応を要求されるものにAID(非配偶者間人工授精)があります。AIDは夫の精子では妊娠が不可能な場合にのみ夫以外の精子で人工授精をする方法です。精子の提供者は遺伝性の疾患や性病などの危険性を持たないことと妊娠させる能力が高いことを条件に若くて健康な男性が選ばれます。
日本のAIDは1984年に慶応義塾大学教授の安藤画一氏によって臨床応用され、その翌年に最初の赤ちゃんが誕生しました。1992年に顕微授精が導入されたため、AIDの選択は少なくなりましたが、1998年から2002年にかけては年間平均にして1608組前後の夫婦がAIDを受診し、164名の赤ちゃんが誕生しているのです。
1995年頃、インターネット販売による精子売買活動が発覚し、日本産婦人科学会は『非配偶者間人工授精と精子提供に関する見解』を会告してこれらを規制しました。これによってAIDを実施する夫婦の条件、夫婦と生まれた子供へのプライバシーの配慮、精子提供者の条件、精子提供者のプライバシー保護と記録の保存、営利目的での精子提供の斡旋や関与の禁止、施設登録の厳守がここに明記されることになったのです。同時にAIDを実施することにおいて夫婦双方の同意確認を得るとともに同意書の提出を義務付けられました。
AIDの対象夫婦は「本法以外の医療行為によって、妊娠の見込みがないものと判断とされ、しかも本法によって拳児を希望するもの」というのが『非配偶者間人工授精と精子提供に関する見解』においての条件です。不妊症の原因において無精子症や精巣内に精子細胞が見つからなかった場合、男性側の染色体に問題がある場合などで、顕微授精を繰り返しても妊娠しなかった夫婦が、このAIDを提案されます。
AIDは不妊治療における最終選択になります。お医者さんからは子供を持たないで2人で生きる道、養親になる道、そしてAIDで親になる道について説明をしてくれます。もしもその段階でAIDは選択した場合、幾つかの条件をクリアしなければなりません。
まず、医療施設に婚姻関係を証明する戸籍謄本を提出します。そして医師から生まれてくる子供を嫡出児として認知することと精子提供者の情報は一切与えられないことなどを確認され、既定の同意書に夫婦それぞれで署名します。またAID承諾の証明としても夫婦の署名が入った同意書の提出が義務付けられています。
現在の日本でのAIDにおける精子提供の条件として、第3者からの精子、卵子、胚などの提供は認められていますが、近親者からの提供は今後の検討とされております。また、アメリカなどで広く知られている第3者の女性が出産する代理出産は日本においては禁止されています。また、生まれた子供は希望すれば15歳になると同時に遺伝上の親の氏名と住所の情報を知る権利が与えられます。
AIDについての捉え方は人それぞれです。子供を持ちたいと強く思っているのか、血にこだわるのか、周囲から子供を強く求められているのか、AIDに踏み切られる患者さんの環境は本当に様々なものがあります。しかもAIDの体験記録や情報はほとんどないうえに、友人や家族、カウンセラーなどに相談することもほぼできません。
最近では匿名で本音を話せるという利点からインターネットで情報収集することができますがそれも最近になってからの動きです。AIDの最終判断は、夫婦双方で自問し、何度も話し合い、人生の折り合いと今まで以上の相互理解を深めたうえで選択していくことになると思われます。
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